図面を描いていると、建ち上がるべき建物の外部形態も内部の空間構成もほぼ完全に思い浮かべられるもので、それに十分な想像力の射程距離を持つことは建築家の資格の一つだと思う。その考えは今も変わらないのだが、いつからか模型をよくつくるようになった。きっかけは、たまたま簡単な模型をつくって建築主に見せたら、こちらが驚くほど喜んでくれたことにある。建築主の子息の小学生が設計に興味を示すので、その坊やへのウケ狙いで模型をつくった。
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青焼きの立面図を厚紙に貼り、当時の少年雑誌の模型付録みたいに「のりしろ」をつけて切り抜いて組み立てただけのものだったが、これが坊やだけでなく親にまで大ウケで、「あ、なるほど、こういう格好になるんですか」と納得してもらい、以後は打ち合わせがトントン拍子に進んだ。この経験から、素人というと語弊があるが、一般の方々には、図面から実際の建物の形を思い浮かべることが、こちらの予想以上に難しいのだ、ということをあらためて認識した。自分の構想を建築主に分かりやすく伝える努力をするのは建築家の責務だから、その手段としての模型は大切だな……そう思うようになってからは、設計の初期から外部形態の簡単な模型をつくる。幸い発泡スチロールという便利な素材と、それ専用の熱線カッターが使えるようになったので、形態模型をつくるのは簡単だ。設計している私自身は依然として検証手段としての模型の必要をあまり感じないが、いったんできてしまった模型は好きである。普通の住宅の百分の一の模型なんて実にかわいいもので、掌に載ってしまうサイズだが、それを眺めて、自分はこの百の三乗倍、つまり百万倍のボリュームの形の決定を任されているのだ、と思うと、その責任と同時に建築家冥利を感じる。